月に一度の恒例イベント「飯沢耕太郎と写真集を読む」が10月16日の日曜日に開催されました。(これまでの講座の様子はこちら)
めぐたまの5000冊を超える写真集の持ち主、写真評論家の飯沢さんの解説とともに、写真集を味わう。今回のテーマは「ロバート・フランク『アメリカ人』を全バージョンで読む」です。
日本有数の写真集コレクターとして知られる写真史家の金子隆一さんをお迎えし、金子さん所蔵の『アメリカ人』の各バージョンを見比べていきます。
飯沢さんと金子さんは40年来の付き合いとのこと。貴重な本をじっくりと読むことができるだけでも贅沢な時間ですが、おふたりの豊富な知識と写真集に向けられた想いがぶつかることで、お互いがお互いの言葉を引き出していくようでした。
『アメリカ人』は1958年から2008年までの50年のあいだに8度も出版されています。有名な写真集が覆刻版や改訂版として再版されることはありますが、本作はそのどちらでもなく、基本的には同じ写真を使いながらも、その都度1冊の写真集『アメリカ人』として刊行されている珍しい写真集です。
1954年、アメリカの写真を撮ることを条件にグッケンハイム奨学金をもらい、ロバート・フランクは2年間アメリカを旅します。
戦後のアメリカ、その華やかな時代に潜む影を捉えたスナップ写真は、当時のアメリカでは受け入れられず、1958年の初版はフランスで『Les Américains』として出版されました。
被写体は星条旗、ジュークボックス、自動車といったアメリカ的なアイコンが多く、なぜ星条旗をたくさん撮るのかという質問に対し、ロバート・フランクは「星条旗がたくさんあるから」と答えたそうです。スイスで生まれ、憧れの地で成功を夢見た若者が見たアメリカ。ふとよぎる影にカメラを向けた冷ややかな目線を感じます。
1959年にはアメリカ版『The Americans』も刊行され、その後も版を重ねるごとに装丁や判型、印刷やトリミングが少しずつ変化をしています。各バージョンを並べて見てみると、それぞれの違いがはっきり分かります。
「現代写真のバイブル」と言われる『アメリカ人』ですが、1枚1枚の写真がのちの写真家に与えた影響はもちろんのこと、見開きに1点のみ写真を置くその作り方は、写真集の典型となりました。そのスタイルは戦前のアメリカを写したウォーカー・エヴァンズの『アメリカン・フォトグラフス』の踏襲であり、金子さんはロバート・フランクが引き継いだことによって、「点が線になった」と語ります。そして、ロバート・フランクが描いた線は関口正夫・牛腸茂雄の『日々』(1971年)、高梨豊の『東京人 1978-1983』(1983年)など、さまざまな写真家たちによってつながれています。
おふたりのお話を聞いていると一時間半の講座もあっという間に過ぎていきました。講座のあとは皆さんでランチ。めぐたまの美味しいご飯を食べながら、講座で話し切れなかったエピソードなどもお話してくださりました。
次回、11月は『シカゴ、シカゴ』(1964年)などで知られる写真家・石元泰博さんを取りあげます。特別ゲストとして、遺作を保存・管理している高知県立美術館石元泰博フォトセンターの学芸員、影山千夏さんにもお越しいただく予定です。
みなさんのご参加をお待ちしております。
【次回講座のごあんない】
飯沢耕太郎と写真集を読むvol.27
「アメリカと日本・「二つの眼」を持つ写真家、石元泰博を読む」
11月13日(日)
10:00~11:30
2500円(三年番茶付き) 学生割引 1500円(三年番茶付き)
定員 15名
場所 めぐたま
* お申し込み megutamatokyo@gmail.com
*たまにメールが届かないことがあります。3日以内に返信がない場合、お手数ですが再度メールくださいませ。
*前日、当日のキャンセルは準備の都合がありますので、キャンセル料をいただきます。
*飯沢さんと一緒にランチを食べる方は事前にお申し込みいただけると嬉しいです。(休日ランチ1500円)
写真/文 館野帆乃花
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