金子隆一」タグアーカイブ

飯沢耕太郎の写真集を読むVol.35 「幻の写真家」飯田幸次郎を語る

IMG_3075

『写真 飯田幸次郎』出版記念
飯沢耕太郎の写真集を読むVol.35 「幻の写真家」飯田幸次郎を語る

 戦前の1920〜30年代、東京・浅草でそば屋を営みながら活動を続けていた写真家がいました。
『光画』に発表された「看板風景」、「屑車で眠る少年」など、素晴らしい作品を残しますが、その後、彼の足跡はぷっつりと途絶えてしまいます。

ところが最近になって、この「幻の写真家」飯田幸次郎のその後が判明し、彼の全作品を収録した『写真 飯田幸次郎』が刊行されました。

今回の「写真集を読む」には、その飯田幸次郎写真集刊行委員会のメンバー、飯田ハルオさん(幸次郎のお孫さん)、金子隆一さん、川口和之さん、中村恵一さん、そして飯沢耕太郎が参加し、写真集出版の経緯、飯田幸次郎の日本写真史における位置づけなどを語り合います。

『写真 飯田幸次郎』(飯田幸次郎写真集刊行委員会)(販売価格・2700円)もその場で購入できます。またとない機会なので、ぜひお誘い合わせの上、足をお運びください。(飯沢耕太郎)

2月24日(土)
10:00~11:30

トーク
HAL_さん(幸次郎のお孫さん、アーティスト)
金子隆一さん(写真評論家、写真史家)
川口和之さん(写真家)
中村恵一さん(文化史研究家)
飯沢耕太郎(写真評論家)

2500円(三年番茶付き) 学生割引 1500円(三年番茶付き)

場所 写真集食堂めぐたま

* お申し込み megutamatokyo@gmail.com

*たまにメールが届かないことがあります。3日以内に返信がない場合、お手数ですが再度メールくださいませ。

ランチ
飯沢さんと一緒にランチを食べる方は事前にお申し込みいただけると嬉しいです。
ランチ1500円。

「飯沢耕太郎と写真集を読む 番外篇 『植田正治作品集』を巡って」講座レポ

 

2月12日に、月に一度の連続講座「飯沢耕太郎と写真集を読む」を開催しました。

「写真集を読む」では毎回、テーマに合わせて写真評論家の飯沢さんが“写真の味わい”についてお話しています。(これまでの講座の様子はこちら

DSC_0749

DSC_0779

今回は、植田正治の決定版『植田正治作品集』(河出書房新社)の刊行記念として、飯沢さんと共に監修をつとめた写真史家・金子隆一さんに来ていただきました。

DSC_0780

2000年に亡くなってから17年が経ってもなお、多くの人を魅了する植田正治の写真世界。

この度の作品集は、本人が生前に発表した雑誌の初出をたどり、プリントやフィルムが無い写真に関しては、雑誌をスキャニングしています。そのため、展覧会やこれまで刊行されてきた写真集では見ることができなかった作品がたくさん収められているのが特徴です。

DSC_0758

モノクロのイメージが強く、カラー写真は80年代から晩年にかけての作品という印象が強い植田正治さんですが、雑誌をたどるなかで70年代からすでにカラー写真に力を入れて取り組んでいたことがわかったそうです。

飯沢さんは「シンプルな印象がありながらも、カラーだからこそ表現できる世界があって、単純化することで世界を浮かびあがらせていくような感じがします。」と、初期のカラー写真には新鮮なショックがあったことを話してくれました。

DSC_0768

大の甘党だった植田正治さん。トークの合間のおやつタイムでは、植田正治さんの妻、紀枝さんのレシピから「淡雪」というお菓子をご用意し、皆さんでいただきました。

DSC_0795

イベントも後半になると、植田さんとの思い出話も。

写真技術や戦前の写真について、多くのことを教わったという金子さんからは「植田先生が話すことの全ては『写真っていいよね』ということにつながっていました。」と植田さんとのエピソードもお話していただきました。

DSC_0754

トークのあとには「植田正治が愛した食卓」と題して、ご飯会も行いました。ご飯会のようすは「植田正治が愛した食卓」レポートをご覧ください。

金子さん、植田正治事務所の増谷さん、そしてご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!

【お知らせ】

今年の「写真集を読む」からロングバージョンの記事を有料配信しています。
飯沢さんと金子さんのトークの全容はこちらをご覧ください!

連続講座「飯沢耕太郎と写真集を読む」(ウェブマガジンmine)
※上記サイトにアクセスし、有料版にお進みください

1万字を超えるボリューム満点の内容で、作品集をお持ちの方はもちろんのこと、まだ本を見ていない方にも分かりやすく、植田正治の写真世界のおもしろさをたっぷり解説しています。

●目次●
1. 『植田正治作品集』 ―雑誌の初出ということ
2.  評価の根拠 ―時代の移り変わり
3.  カラー作品をひも解く
4.  <風景の光景>の再評価

 

写真/文 館野帆乃花

「飯沢耕太郎と写真集を読む」番外篇 『植田正治作品集』を巡って

IMG_6176

「飯沢耕太郎と写真集を読む」番外篇 『植田正治作品集』を巡って

 足掛け5年あまりという長い準備期間を経て、河出書房新社から刊行された『植田正治作品集」は、まさに「決定版写真集」というのにふさわしい内容です。
全229点というボリュームもさることながら、初出の雑誌に当たってトリミングやレイアウトを決定したことによって、これまでほとんど写真集や展覧会のカタログに掲載されてこなかった作品を、多数収録することができました。

新たな、未知の可能性を持つ「写真する哲学者」植田正治の像が、くっきりと浮かび上がってきたといえるでしょう。
今回は同作品集ひも解きながら、監修者の飯沢耕太郎と金子隆一が、植田作品の魅力についてじっくりと語り合います。

植田正治が食べていた、奥様の紀枝さんのレシピによるおやつ付き。
上の写真の右の写真集の女性が紀枝さんです。

ぜひ足をお運びください。

◎植田正治の愛したご飯会
トークの後に、植田正治の愛したご飯会をやります。

みそ汁が苦手だった植田さんの愛したじゃぶ汁(洋風すまし汁)も作ります。
ほとんど毎日食卓に出ていたモズク酢も。
好物だったあごの焼き(飛び魚の野焼きかまぼこ)や赤かれいの干物などもでます。

お孫さんの増谷さんから植田サンのエピソードを聞きながら、植田家に招かれた気分でご飯を食べましょう。

別料金、3000円(ドリンク別)です。

2月12日(日)

15:00〜17:00

3000円(トークと植田紀枝さんのレシピによるおやつ付き)

トーク:金子隆一さん(写真評論家)
    飯沢耕太郎さん(写真評論家)

場所 写真集食堂めぐたま

*トーク終了後、植田正治の愛したご飯会をします。お時間ある方ご参加ください。(別料金、3000円、ドリンク別)

* お申し込み megutamatokyo@gmail.com

*たまにメールが届かないことがあります。3日以内に返信がない場合、お手数ですが再度メールくださいませ。

*前日、当日のキャンセルは準備の都合がありますので、キャンセル料をいただきます。

飯沢耕太郎と写真集を読むvol.26 ロバート・フランク『アメリカ人』を全バージョンで読む」講座レポ

 

月に一度の恒例イベント「飯沢耕太郎と写真集を読む」が10月16日の日曜日に開催されました。(これまでの講座の様子はこちら

めぐたまの5000冊を超える写真集の持ち主、写真評論家の飯沢さんの解説とともに、写真集を味わう。今回のテーマは「ロバート・フランク『アメリカ人』を全バージョンで読む」です。
日本有数の写真集コレクターとして知られる写真史家の金子隆一さんをお迎えし、金子さん所蔵の『アメリカ人』の各バージョンを見比べていきます。

dsc_0508

飯沢さんと金子さんは40年来の付き合いとのこと。貴重な本をじっくりと読むことができるだけでも贅沢な時間ですが、おふたりの豊富な知識と写真集に向けられた想いがぶつかることで、お互いがお互いの言葉を引き出していくようでした。

dsc_0505

『アメリカ人』は1958年から2008年までの50年のあいだに8度も出版されています。有名な写真集が覆刻版や改訂版として再版されることはありますが、本作はそのどちらでもなく、基本的には同じ写真を使いながらも、その都度1冊の写真集『アメリカ人』として刊行されている珍しい写真集です。

1954年、アメリカの写真を撮ることを条件にグッケンハイム奨学金をもらい、ロバート・フランクは2年間アメリカを旅します。

戦後のアメリカ、その華やかな時代に潜む影を捉えたスナップ写真は、当時のアメリカでは受け入れられず、1958年の初版はフランスで『Les Américains』として出版されました。

被写体は星条旗、ジュークボックス、自動車といったアメリカ的なアイコンが多く、なぜ星条旗をたくさん撮るのかという質問に対し、ロバート・フランクは「星条旗がたくさんあるから」と答えたそうです。スイスで生まれ、憧れの地で成功を夢見た若者が見たアメリカ。ふとよぎる影にカメラを向けた冷ややかな目線を感じます。

dsc_0520

1959年にはアメリカ版『The Americans』も刊行され、その後も版を重ねるごとに装丁や判型、印刷やトリミングが少しずつ変化をしています。各バージョンを並べて見てみると、それぞれの違いがはっきり分かります。

「現代写真のバイブル」と言われる『アメリカ人』ですが、1枚1枚の写真がのちの写真家に与えた影響はもちろんのこと、見開きに1点のみ写真を置くその作り方は、写真集の典型となりました。そのスタイルは戦前のアメリカを写したウォーカー・エヴァンズの『アメリカン・フォトグラフス』の踏襲であり、金子さんはロバート・フランクが引き継いだことによって、「点が線になった」と語ります。そして、ロバート・フランクが描いた線は関口正夫・牛腸茂雄の『日々』(1971年)、高梨豊の『東京人 1978-1983』(1983年)など、さまざまな写真家たちによってつながれています。

dsc_0516

おふたりのお話を聞いていると一時間半の講座もあっという間に過ぎていきました。講座のあとは皆さんでランチ。めぐたまの美味しいご飯を食べながら、講座で話し切れなかったエピソードなどもお話してくださりました。

次回、11月は『シカゴ、シカゴ』(1964年)などで知られる写真家・石元泰博さんを取りあげます。特別ゲストとして、遺作を保存・管理している高知県立美術館石元泰博フォトセンターの学芸員、影山千夏さんにもお越しいただく予定です。

みなさんのご参加をお待ちしております。

 

【次回講座のごあんない】

飯沢耕太郎と写真集を読むvol.27

「アメリカと日本・「二つの眼」を持つ写真家、石元泰博を読む」

11月13日(日)

10:00~11:30

2500円(三年番茶付き) 学生割引 1500円(三年番茶付き)

定員 15名

場所 めぐたま

* お申し込み megutamatokyo@gmail.com

*たまにメールが届かないことがあります。3日以内に返信がない場合、お手数ですが再度メールくださいませ。

*前日、当日のキャンセルは準備の都合がありますので、キャンセル料をいただきます。

*飯沢さんと一緒にランチを食べる方は事前にお申し込みいただけると嬉しいです。(休日ランチ1500円)

 

写真/文 館野帆乃花